22 白神岳(1235m){シラカミダケ} ☆百名山☆
県=秋田・青森 一等三角点 同行者=総勢十五人の山旅
コーディネーター=旧白神ブナ俱楽部企画 佐々木昇氏
登山日:2000年10月9日
Outdoor Style サンデーマウンテン
世界最大の「一千万本のブナ」が自然に生育する白神山地。ブナの植生を中核とした豊饒な森を清冽な渓流が潤し、豊かな植生ゆえの多様な動植物が生態系を作り出しているという、世界自然遺産に登録された貴重な白神岳に挑戦する機会が訪れた。
石井さんが「白神山地の山々」を白山書房から出版した。その記念登山で、旧ブナ俱楽部の面々も参加して15人の大部隊の山行である。
私と石井さんはリーダーの佐々木宅に前泊して大変なお接待を頂いた。翌日それぞれのエリアから日野林道終点の白神平に集合して、初対面の人々と挨拶を交わし、リーダーの注意事項に耳を傾け、トイレを済ませ準備運動の後、登山口の案内板の脇から入山する。
すぐに注連縄の張られた立派な御神木が出迎えてくれる。先の崖の右側を通り抜け、初秋の白神山地の森林浴に指たり、リーダーのユニークな案内を聞きながら、優しく歩を進め二股分岐に差し掛かると、リーダーからここで健脚組と一般組に分かれるとの案内があった。
健脚組はサブリーダーの岩川達男さんの先導で男五人集が、白神川の源流を辿って直登するとの事。踏み跡程度の急登の沢道は、可也きついらしい。石井さんも健脚組に入っており、とても無理だと主張するもリーダーの権限は強く指示に従ってやむなく登って行った。
一般組は健脚組と別れ、急斜面を大きく曲折しながら登り、数ヶ所の小沢を渡り、最後の水場から黄色く色づいたブナ林を登って行く。長い年月の風雪に耐え伐採に逃れて生き残ったブナの巨木が心身を安らかにしてくれて不思議な感覚と癒しの力を与えてくれるよう雰囲気だ。周囲が人間の両腕に余る巨大な樹幹がどっしりと立ち並び、雪深い地域なのに直立している様は見事なもので感激する。
リーダーの案内では「ブナは大きく広げた大枝から枝先の直下まで根を張っている。この巨木を見上げれば、この辺りまで(10m)根がきている。ちょっとやそっとの風雪にも耐えられる」と説明があり何百年も生き延びる。灰色の木肌に深緑のまだら模様が浮き、黒味がかった苔の斑点があり、木によっては熊が登り下りした獣跡も見受けられた。 大自然の中に身を置き満喫することのできる、この山域は苔むした岩塊と色づいた原生ブナ林とイタヤカエデやヤチダモ、ホウノキ、サワグルミの大木が、よく調和した風景林でとても素晴らしい。
やがて尾根上の蟶山分岐に出ると、紅葉の錦を羽織ったような白神岳が凛々しい姿を見せてくれた。
リーダー談では、「蟶山は四十分程度で往復出来るが、今日は沢コース組と山頂で合流する為、時間的に無理である」。「この方向の紅葉の樹海の上に、岩手山がその美しい山容が望める筈だが、生憎ガスが湧いて残念だ」。
白神の森はいま、紅葉の季節を迎え、赤く色づくヤマモミジやヤマウルシ、黄色いイタヤカエデやブナなど落葉樹が多い。やがて冬に備え葉を落として身軽になり、寒さと乾燥にジーット耐え春を待つのだ。そんなことを考えながら森を歩いていると、ほのかに甘い香りが漂い鼻腔をなでた。香りの主は黄色い葉っぱを身にまとったカツラの木だった。
やがて南面が切れ落ちた急傾斜の登りに入り、慎重にしばらく歩を進め十二湖への縦走コースの分岐にでる。なだらかなこの辺りは、霧の時は要注意の場所らしく、太い枝で造られた三俣に鐘が釣り下げられていた。 緩やかな笹原を辿り、展望の広がる稜線に出ると、赤茶色に彩られた灌木や草紅葉に覆われた北国の秋が待っていた。石祠のあるピークから頂上避難小屋が見えて来た。
更に進むと避難小屋とトイレ棟の背後に向白神岳がどっしりとした山容で姿を現していた。緩やかな稜線を進み、我慢していたトイレに皆で駆け込んで用を済ませて、念願かなった白神岳山頂を踏み三角点標石にタッチした。
四方が開けた頂きから原生ブナ林に覆われた白神山地の核心部分が眺望出来る筈だが、生憎の曇天で望遠は成らず、眼下に日本海が望め、海抜0mから登ったという厳しいかった実感が湧く。暫く沢コースから来る健脚組を待ち、広い山頂で花々を探したが冬支度に入っており草紅葉だった。四十分遅れで山頂に立った沢コースの面々を加え記念写真に納まり下山に掛った。
下山は秋山の恵みであるキノコや山ブドウをゲットしながら、クマ除けの鈴を高らかに鳴らし、豊饒の森を充分に堪能して下山した。打ち上げは能代に戻り「べらんめー」という居酒屋で和気藹々締め括った。翌日、皆と別れ石井氏と大曲の郊外にある神宮寺山(277m)に向かった。
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