46 大白森(1216m)
県=秋田・岩手 同行者=石井さん、他16名
コーディネーター=旧白神ブナ俱楽部企画 佐々木昇氏
登山日:2000年6月24日
Outdoor Style サンデーマウンテン
「白神ブナ倶楽部」山岳会が解散して1年が経つ。今回、佐々木氏から「心静かに花の稜線をのんびりと歩いてみませんか」との山行企画が、石井さんを通じてお誘いがあった。喜んで二つ返事で参加する旨を石井さんに告げた。
山行日程は6月23日~25日、秋田駒ケ岳外輪山と大白森そして貝吹山。始発の、やまびこ一号で田沢湖駅に降り立ち、迎えの佐々木氏をはじめ、遠くは福岡市や奈良市からの山きち18名が、久し振りに顔を揃えた。男4名、女性14名の大部隊である。
佐々木氏が設えた中型のマイクロバスに乗り込み、車内は心静かどころか、その後の山行をめぐっての話題に余念がない。程なく車は秋田駒ケ岳の八合目に到着したが、外輪山は勿論、辺りはガスに閉ざされ冷たい風雨が吹き荒ぶ荒天で、やむなく今夜の宿である鶴の湯へ入った。
宿は萱葺きで、軒には夥しい限りのイワツバメの営巣があり、忙しく空を舞っていた。豊かな自然の中に溶け込んだ気持で心和むひと時を過ごす。秘湯ブームで鶴の湯は今から予約を入れても、半年先の正月あけまで満室とのこと。明日の山行に備えアルコールも程々にランプの宿ということもあり早寝した。
翌朝、空を仰ぐと昨日と同様に梅雨の晴れ間はなく、低く垂れ込めたガスに閉ざされていた。「クマ出没注意」の立て看板の脇から鶴ノ湯神社の祠に立ち寄り、静寂な新緑の森へと入る。先ずガマズミが白い花を賑わせ、梢にはホオノキが大きな白い花弁を広げていた。どことなく漂う硫黄の匂い。足元にはナツエビネやツバメオモトが独り寂しく咲いている様は、湿とりした林床に良く似合う。
やがて蟹場温泉への道を分け、あたりの植生も新緑のブナ樹林となり、羽化したばかりのクマゼミが羽を乾かしていた。気持の良い登山道を無心に登ると間もなく、金取坂という不思議な名の坂に指しかかった。坂を登り切ると、秋田駒ケ岳が梅雨空に優美な姿を煙らせていた。
ここからブナの樹林帯をつめて稜線に出ると、エンレイソウやコイワカガミ・珍しいオクエゾサイシンが見られ感激する。
先には乳頭山への分岐の道標があり、やがて緩やかな上りの稜線歩きで、池塘のある湿原が広がった小白森山に着いた。木道の周りはミズバショウやコバイケソウ・ハクサンチドリ・ヒメシャクナゲ・ウラジロヨウラクなどが咲き誇る。シーンと静まりかえっている頂は、そよぐ風がワタスゲをなぜ、鶯の鳴き声が綺麗に透き通って聞こえる。「自然は神のつくった最高の芸術」といわれ、ここに立って所以が解る。
一服して今度は少し下って鞍部に達し、クマの昼寝場やアカゲラの巣跡の説明を受けながら、ブナ樹林を登り返しひたすら高度を上げて行く。再び広い稜線を抜けると広大な湿原が広がり苗場山を思い起こさせる。
辺りは一面のお花畑でチングルマ・ムシトリスミレ・サンカヨウ・ミツガシワ・ミヤマカラマツ・シラネアオイ、貴重になったギンラン等々と、名も知らぬ可憐な花まで今がこの世の春と謳歌していた。
カッコウが遠くで声を震わせ哀愁を誘う気持の良い山頂。奥行きのある山頂には三角点標石は似合わぬが、大部隊の集合写真に収めた後に、各々狭い木道に腰をおろし、束の間の天上楽園を満喫した。去り難い重い腰をあげ、下山は来た道を戻り今夜の宿である「ロッジ山の詩」に全員無事に到着した。
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