57 和賀岳(1440m) ★二百名山★ *花の百名山*
県=秋田・岩手 一等三角点
コーディネーター=白神ブナ倶楽部 佐々木昇氏
同行者=13人の山旅(斉藤さん、美代さん、豊子さん、久保見さん)
歩行=20km 時間=8時間
登山日:2006年10月15日
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Outdoor Style サンデーマウンテン
和賀岳は、岩手・秋田県境に連なる和賀山塊の最高峰で、別名阿弥陀岳と言われている。今回は2泊3日の白岩岳・和賀岳のセットの山行である。健脚者なら白岩岳から錫杖の森を経て、テント泊で和賀岳に登って、薬師岳コースに下山するのが素晴らしいと思うが、何しろこの老体だ。前日・白岩岳に登って、川口温泉・奥羽山荘に投宿し、夜が未だ明けやらぬ5時に山荘を出た。次第に谷を挟んだ両側の尾根が高くなり、空が狭くなった奥深い真木渓谷に入り、小路又の甘露水登山口まで車で入った。
10台ほど駐車できる広場には、先着の静岡ナンバーの車が1台あり、登る準備をしていた。よく見ると何処かで見覚えのある車だった。恐る恐る「一昨年7月下旬に北海道の伏美岳に登られていませんでしたか?」と伺ったら、「登っていました。」とのこと。山も広いようで狭いと思った次第だ。薄暗い路傍で温かいオニオンスープとおにぎりで朝食を済ませ、甘露水で飲み水を調達した。出発間際に「ザックから水が滴り落ちている」と言われ、水筒の栓がよく閉まってなくて漏れ出し、ザックの中がびしょ濡れになってしまった。
朝露で濡れた杉植林を登って、大連寺ブナ林の斜面を過ぎると、直ぐに曲沢の分岐に着いた。あたりが明るくなり、暫くの間、気持の良い鮮やかな黄葉に彩られた小路又ブナの原生林を辿る。僅かに水が流れている沢を下り、先にある滝倉の流水利用の水場で水を補給した。あたり一面のブナ林を辿り、平坦な道には木漏れ日が差し込み、薬師岳避難小屋跡を通り過ぎる。
高度を稼いだので、植生も低木の灌木帯となった。ここまで上って来ると、既に紅葉も終りを告げ、林床に敷き詰められた落葉がふかふかで気持ちが良い。更に急登を繰り返し、ジグザグを切って登り切ると倉方分岐に飛び出した。ここから尾根筋となり、展望が開けた。薬師岳から和賀岳にかけての稜線が見えて来た。眺望を楽しみながら登り薬師岳への分岐に着いた。
薬師岳頂上は登山道の続きになく、分岐からほんのちょっと登って、引き返すことになるが、山頂には祠が有り薬師如来が祀られていた。山頂から和賀岳の稜線が清々しく見えた。本邦の和賀岳は、あいにくガスが流れていて見えなかった。一旦引き返し、薬師岳の山頂をトラバースするように左に回り込み、草原の中を行く。猛烈な風が吹き付けるお花畑を少し下ると、登山道は藪の中に吸い込まれ、僅かに藪の切れ間を判別しながら進んだ。
やがて、平坦地を下り気味に軽く右にとると、明るい笹原の薬師平に出た。少し右に折れた処に地塘があり、「初夏ですと高山植物の宝庫で綺麗ですよ」「今回は紅葉巡りだが次回は花を見に来ましょう」とサブリーダーの高橋さんが話してくれた。
さして苦労しない笹原の長閑な稜線歩きで小杉分岐に着く。頭上はアキアカネの一直線に風を切るもの、高く旋回するものなど乱舞いの中にあった。小杉山の三角点(1229m)は登山道から少し入った藪の中にあった。
ここから少し右に折れ、稜線上はおおむね低い灌木と笹に覆われていた。所々にクマザサの深い箇所もあり、右手の和賀川の源頭部の沢筋には落葉したダケカンバの白い木肌が綺麗に望めた。
快適な稜線歩きも束の間で、前方にガスの切れ間から山頂が望めたと思ったら、これはニセ和賀岳の小鷲倉で、喘ぎながら登り切ると、和賀岳の全容がみえ安堵する。
それにしても長丁場の稜線だ。その後に軽い鞍部を経て登り返せば、山頂に着く目鼻が立った。気合を入れて歩を進め、やっとの思いで、皆から遅れながらも山頂に立った。昨日の白岩岳と、今日の和賀岳の連日は、老体には堪えた頂きだった。
頂上は広く小さな祠と一等三角点標石が置かれ、先には石碑が有り、『「岩根にカモシカ 笹藪に熊 谷間に猿も遊んでいます」登山道開発記念 一九六四年八月 秋田大曲山彦会・太田村山岳会・仙北村山の会』と刻まれていた。
頂上ではガスも飛び散り、快晴に恵まれ、全方位の眺めは雄大で、その奥深い山容と広大さには圧倒される。目の前には昨日登った白岩岳、北には秋田駒ケ岳・岩手山・森吉山が望め、南西には、なんと鳥海山が雲の上に顔を出していた。机上のパノラマ画像では、焼石岳・早池峰山・姫神山・月山なども眺望できる筈だが、あいにくの季節柄、稲を刈採った後の籾殻焼きのスモッグが立ち込めており、残念ながら望むことが出来なかった。
同行の斉藤さんから「ザック乾きましたか」と尋ねられ、慌ててザックの中身を天日干しに広げ、いつまでも見ていて飽きない遠い山を眺めながら、あの山へもこの山へもと、苦しかった登りが忘れ去り、次の山行を想像しながら昼食をとった。
去りがたい山頂に別れを告げ、腰を上げる。下山はルンルン気分で、秋の終りを告げる紅葉に彩られた広大な樹海や和賀川の源頭部の沢や滝、沢筋に光るダケカンバの樹林を眺めながら下りた。
これから下る登山道を見渡しながら、下って行くと、サブリーダーから話し掛けられ白岩岳が何故「白岩岳」と言うのか、確かめる場所があると教えて頂き見に行った。なるほど…南斜面はいたるところに緑色変成岩が剥き出した山肌で、白岩と言われる訳が解った。その上に白岩岳からの縦走コースである熟練者向きの「錫杖の森コース」も確認できた。
振り返れば、雲の去来する中に見え隠れする和賀山塊の山々を眺め、薬師岳から薬師平に至る草原地帯に、沢山の花々が咲き競った花柄があちらこちらと見渡し、軽やかに歩を進めた。
滝倉の水場では、美味しい自然水を頭から被り、充分に咽を潤し、やがて植林された杉が現れると多くの場合林道が近い筈だ。植林帯を一気呵成に下り、間もなく林道のある登山口の甘露水に着いた。
真木渓谷は奥深い谷で、『真木真昼県立公園に指定され、大連寺ブナ林や袖川園地近辺では、板状節理や球状節理、柱状節理が見られる。それに加えて、真木白滝・七瀬大滝などが鑑賞できる。』と案内板に記してあった。
林道を下り、途中の休憩舎で出会った地元の古老に「今日はクマに遭わなかった。」と言ったら、「今は里に下りて来ていて、養蜂業者などは蜜箱を荒され全滅された。」とのこと。クマが食料のために里まで下りてくるとは、下りてからも気をつけねばと思った次第だ。一路、今夜の宿である川口温泉へ車を走らせ、投宿する奥羽山荘に入った。
ツルツルとした単純泉の温泉に浸かり、2日間の山行の疲れを癒し、秋田の美酒と郷土の肴で労った。明日は、ツマールの森から乳頭温泉郷へ入り、ブナの二次林を探索し、紅葉と鶴の湯の混浴を楽しみにして…と考えながら、帰路に着いた。
以下、翌日に堪能したツマールの森と乳頭温泉郷
☆今回お世話になった宿情報☆
■川口温泉 奥羽山荘
公式HP: https://moribo.net/
※奥羽山荘は令和2年5月31日をもって一度閉館されたとのことですが、
譲渡を受け、令和2年8月1日に新たな『奥羽山荘』として
グランドオープンされております。
総合旅行予約サイトの楽天トラベル
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